【感想】小説『何様』/ 朝井リョウ

こんにちは、ぱんです。

この度、朝井リョウさんの『何様』を読みました。

この記事では、本書のあらすじと感想をまとめています。

あらすじ、作品紹介

あらすじ

光太郎が出版社に入りたかったのはなぜなのか。
理香と隆良はどんなふうに出会って暮らし始めたのか。
瑞月の両親には何があったのか。拓人を落とした面接官の今は。
立場の違うそれぞれの人物が織り成す、`就活’の枠を超えた人生の現実。
直木賞受賞作『何者』から3年。いま、朝井リョウのまなざしの先に見えているものは――。

Amazonより

作品紹介

  • 書名:何様
  • 著者:朝井リョウ
  • 出版社:新潮社
  • 発行日:2016/8/31
  • ページ数:316ページ
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読んだきっかけ

本編『何者』が読みたくて図書館に借りにいったところ、本作を発見。

てっきり別の作品かと思ったら、なんと『何者』のアナザーストーリーだと??

これは読むしかない!となり、早速拝借。

感想

感動的なストーリーもあり、非常に心を揺さぶられる作品でした。

実は、アナザーストーリーと聞いて、少し視点を変えただけだろうと侮っていました。

ですが実際に読んでみると、別の小説を読んでいるかのような新鮮さがあり、大変面白かったです。

荻島夕子のストーリー

前作「何者」では、「光太郎の忘れられない人」として登場していた荻島夕子にまつわる話です。

本作では「彼女がどのような人物なのか?」「光太郎と彼女の関係性」が本作では描かれています。

読み終えてまず思ったことは、

このさよならの仕方は忘れられないよーーー

あまり自分のことを話さない彼女が、最後に光太郎にメッセージを残した場面で泣けました。

物静かな彼女の内側に秘められた情熱には惹かれるものがありました。

情熱的に見えてどこか冷めているところがある光太郎も、そこに惹かれたのかなあ。

また、夕子さんの優しさにも彼女の魅力を感じました。

まずはこの場面です。

笑ってごまかそうとする俺に、夕子さんはごまかされてくれた。

「何様」p.24

ここで気になっていても深入りしない優しさ、ありがたいなと思いました。

「ごまかされてくれた」という表現も好きです。

そして、夕子さんが光太郎に渡したメッセージに書かれていた「頑張ろう」という言葉。

「頑張って」ではなく「頑張ろう」という言葉で寄り添う優しさ、素敵だなと思いました。

この2つからも夕子さんの優しい人柄が伝わってきました。

そして、なにより水曜日に階段掃除をしていた理由に驚きました。

でもわかる気がするなあ。

全力で前に進んでる人を見ると、どこからかパワーが湧いてくるんですよねー。

光太郎から前に進む力をもらった夕子さんが、その後どうなったかは気になるところです。

光太郎と夕子さんは再会できたのかなあ。

続編があれば、ぜひ読みたいです。

正美と瑞月の父

良い人、というよりも、きっと、誰にとってもいい人でいなければならなかった人だ。

「何様」p.235

優等生として生きてきた正美と瑞月の父。

この2人がいい人の殻を破った瞬間は、とても清々しかったです。

優等生として生き続けるって、きっと苦しいと思います。

生徒会、ボランティア活動、正しいことばかりを共にしてきた友人は、正しい姿しか見せたことがないから、こういうときに寄りかかることができない。

「何様」p.240

この一文から、優等生じゃない自分を見せられる相手って、大切だなと感じました。

面接官杉田さん

こんな上司のもとで働きたい!

と思える人柄でした。

面接官としてデビューした日でも、初めてだと思わせない姿勢。

就活生を不安にさせない配慮誠実だと感じました。

自分が面接官として就活生を評価していいのか?という抵抗感。

「いい」「よくない」で人を見ようとしない優しさを感じました。

「何者」と「何様」

2作読んで、立ち振る舞いに正解はないと思いました。

「何者」を読んだとき、面接官の杉田さんは「リラックスを強要してくる一方的な人」だと感じていました。

ですが、「何様」を読み、「誠実で優しい人」だと感じました。

本作品で、このような言葉がありました。

花奈が拾い上げるものと、俺が拾い上げるものは、違う。同じ世界を生きて、同じものを見ていても。

「何様」p.187

同じ事柄でも、捉え方は人それぞれだなと思うことはよくあります。

ですが、自分の捉え方が簡単に変わるとは思っていませんでした。

今回2作読み、全く違った捉え方をしていたことには驚きました。

このことから、立ち振る舞いに正解はないと気づくことができました。

まとめ

面白さを求めて読み始めた作品でしたが、感動気づきもあり、とても心揺さぶられる作品でした。

ますます朝井リョウさんの他の作品も読みたくなりました。